などとして、遺産分割協議の場面で寄与分の主張がなされるケースが増えています。
寄与分にはいくつかの類型がありますが、実務上、最もよく主張される療養看護型(=被相続人の介護・看護を行ってきたことを寄与分として主張する類型)を念頭に、寄与分の主張はどのような場合に認められるのか、寄与分の主張がなされた場合の対処方法について説明します。
1 寄与分とは
共同相続人のなかに、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人がいる場合に、共同相続人間の実質的な公平をはかる観点から、遺産分割において、特別の寄与をした相続人は、本来の相続分に加えて、その寄与度に応じた額の財産を余分に取得することが認められています。
寄与をした相続人が受けるこのような利益を「寄与分」といいます。
2 寄与分の主張はどのような場合に認められるか
(1) 特別の寄与と評価できる必要がある
寄与分が認められるためにはいくつかの条件を満たす必要がありますが、最も問題となるのは、「特別の貢献」といえるか、すなわち、被相続人に対する介護・看護が、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献と評価できるかどうかという点です。
(2) 特別の寄与であると評価されるための最低限の目安
あくまでも目安ですが、特別の寄与であると認められるためには、少なくとも以下の3つの条件を満たしている必要があります。介護・看護を行っていたのが事実であっても、直ちに寄与分と評価されるわけでは決してありません。
① 介護・看護の期間が1年以上に及んでいること
② 被相続人が入院中あるいは介護施設入所中の介護・看護ではないこと
③ 被相続人が要介護度2以上の状態であったこと
3 寄与分の主張がなされた場合の対処方法
(1) 介護・看護の内容把握・調査
寄与分を主張する相続人から、実際に行っていた介護・看護の内容、期間、被相続人の所在を聴取するとともに、医療・介護記録や介護認定資料を入手して、介護・看護の内容が上記の目安の基準を満たしているかを調査しましょう。
(2) 目安の基準を満たしている場合
寄与分が認められる可能性が高くなりますが、あくまでも目安であり、また、これら以外にも寄与分が認められるために必要な条件はあるため、寄与分の条件をすべて満たしているかを検討することになります。
ただ、その検討のためには、専門的な知識と実務経験が必要になるため、弁護士に相談されることを強くお勧めします。
(3) 目安の基準を満たしていない場合
寄与分が認められる可能性は極めて低いと判断できるため、協議においてその旨を指摘し、相手方の説得を試みることになります。
4 弁護士へ依頼するメリット
相手方が主張する介護・看護の内容が目安の基準を満たさない場合、寄与分の主張が認められる可能性が極めて低いことは上述のとおりです。
ただ、このような事案では、相続人間で比較した場合には、寄与分を主張している相続人が最も被相続人の介護・看護を行っていたというパターンが多く、そのような状況下で、寄与分が認められないと相手方に対して主張・説得することに心理的な抵抗感やストレスを感じる方が多くいらっしゃいます。
寄与分とは評価されないまでも、実態として自分よりも多くの介護・看護を行っていた身内に対して、あなたが行っていた程度の介護・看護では寄与分には足りない、と主張しなければならないからです。
また、相手方からしても、自分よりも介護・看護を行っていなかった相続人からそのような指摘を受けても、心情的に受け入れがたいというのは容易に想像できます。
この点、弁護士へ依頼すれば、代わりに弁護士が説得にあたるため、心理的な負担からは解放されますし、第三者である専門家の話であるため、相手方を説得できる可能性は相対的に高くなります。
このようなメリットがあるため、特に、相手方が主張する介護・看護の内容が目安の基準を満たさない場合には、弁護士へ依頼されることを強くお勧めいたします。
以上