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相続人の不存在

  • 「相続人のあることが明らかでない」(以下「相続人の不存在」といいます。)場合、相続財産は法人とされ、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産管理人が選任されることになります。
  • 戸籍上の相続人が存在しない場合も、相続人の不存在に該当します。
  • これに対し、戸籍上の相続人は存在するものの、当該相続人が行方不明あるいは生死不明の場合は、相続人の不存在には該当しません。この場合、不在者の財産管理制度(民24)あるいは失踪宣告(民30)によって対応することになります。
  • 戸籍上の相続人は存在しないものの、全部包括受遺者が存在する場合は、相続人の不存在には該当しません。

相続人不存在の場合の手続き

1.相続財産管理人選任の申立て(民952条1項)

  • 申し立てが認められるのは、利害関係人および検察官とされています。
  • 利害関係人とは、「相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者」のことであり、受遺者、相続債権者、相続債務者、相続財産上の担保権者、特別縁故者、被相続人からの物権取得者でいまだ対抗要件を具備していない者、被相続人に対して求償権を有する被相続人の債務の保証人、などがこれにあたります。

2.選任後の手続きの流れ

STEP.1相続財産管理人の選任・公告(民952条)

STEP.2債権者・受遺者に対する公告(民957条1項)

  • ・1の公告後2ヶ月以内に相続人のあることが明らかにならなかった場合にのみ行われます。
  • ・公告期間は2ヶ月以上とされています。

STEP.3債権者・受遺者に対する弁済(957条2項)

2の公告期間内に請求の申出を行った債権者・受遺者のみが対象になります。

STEP.4相続人捜索の公告(民958条)

  • ・3によってもなお相続財産が存在する場合にのみ行われます。
  • ・公告期間は6ヶ月以上とされています。
相続人であるにもかかわらず、公告期間満了時までに相続人として権利主張しなかった場合、相続人は失権し、もはや相続権を主張することはできなくなります(最判S56.10.30)。

STEP.5債権者・受遺者に対する弁済(第2次)

  • ・2の公告期間経過後、4の公告期間満了時までに請求の申出を行った相続債権者・受遺者が対象になります。
  • ・逆に、4の公告期間満了時までに請求の申出を行わなかった相続債権者・受遺者はその権利を行使できなくなり、残余財産があっても、もはや弁済を受けることはできなくなります

STEP.6特別縁故者への財産分与(民958条の3)

  • ・特別縁故者からの請求に基づき、家庭裁判所の審判を経て、特別縁故者に対し、相続財産の全部又は一部が与えられる場合があります。
  • 請求は、4の公告期間満了後3ヶ月以内に行う必要があります。
  • ・特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」のことです。

STEP.7相続財産の国庫帰属(民959条)

1から6の手続きを経ても相続財産が残っている場合、当該相続財産は国庫に帰属することになります。

 

この記事の執筆者

弁護士新井教正(アライノリマサ)

代表弁護士の新井教正(あらいのりまさ)と申します。
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