会社経営者の相続におけるポイント【弁護士が解説】 | 大阪の弁護士が運営する相続・遺言・遺留分に関する総合サイトです。相続に関わる問題について、無料相続相談を実施しておりますので、お気軽にご相談下さい。

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1 会社経営者の相続の肝は株式です!

会社経営者が死亡し相続が発生した場合、廃業する場合を除き、会社をいかに円滑に承継・継続していくかが問題になります。

円滑な会社の承継・継続のためには、会社経営者が所有していた事業用資産、会社への貸付金なども重要ですが、最も重要なのは、会社の経営権に直結する株式の相続です。

役員選任などの会社の重要事項については、株式を有する株主が決定権限を有しているためです。

 

2 相続が発生した場合、株式はどうなるか

株式は、相続開始により当然に相続人が相続分に応じて分割して取得するわけではありません(最判H26.2.25)。

遺産分割の協議、調停あるいは審判により株式の取得者が決まるまでは、相続人全員で準共有(*所有権以外の財産権を複数の者が有する状態で、共有と同じ意味とご理解ください。)している状態になります。

会社経営者である父が会社の発行済株式すべて(1000株)を保有している状態で死亡し、相続人が妻と子2人(長男・二男)という場合を例にとれば、父の死亡により、妻が500株の株式を、長男・二男がそれぞれ250株の株式を当然に取得するわけではなく、1000株を妻と子2人で準共有している状態になります。

 

3 相続株式の議決権は誰がどのように行使できるのか

準共有状態の株式の議決権行使の方法については、共有者である相続人は、権利行使者を指定し、かつ、会社に通知しなければ、議決権を行使することができません(会社法106条)。

つまり、準共有状態にある株式について議決権を行使するためには、権利行使者を指定し、かつ、会社に通知する必要があります。

誰を権利行使者とするかについて相続人間で意見が一致すれば問題ありませんが、相続人間で意見が割れた場合は、相続人が有する持分の過半数によって決定することになります(最判H9.1.28)。

そのため、相続人間で争いが生じた場合、遺産分割の協議、調停あるいは審判により株式の取得者が決まるまで、誰も株式の議決権を行使することができない状態となる可能性があり、そうなれば、会社の経営に支障が生じる事態に陥ることになってしまいます。

会社経営者である父が会社の発行済株式すべて(1000株)を保有している状態で死亡し、相続人が妻と子2人(長男・二男)という場合を例にとれば、妻と子2人で誰を権利行使者とするかについて意見が割れた場合、妻が有する持分割合が50%、子2人が有する持分割合が50%となり、どちらも過半数に達しないため、権利行使者を定めることができず、その結果、誰も株式の議決権を行使することができない状態に陥ることになります。

 

4 会社経営者死亡後に会社を円滑に承継・継続していくための方法

このような事態を避けるために最も有効なのは、会社経営者が生前に遺言を作成しておくことです。

遺言で株式の取得者を定めておけば、会社経営者が死亡した時点で、遺言で取得者として定められた者が株式を取得し、単独で議決権を行使することが可能となるため、会社の経営に支障が生じる事態を回避することができます。

ただ、会社経営者の場合、遺産の価値に占める株式の割合が高くなりがちであること、円滑な事業の承継・継続のためには、株式以外にも、会社経営者が所有していた事業用資産の承継も問題になるなどの事情があり、単純にこれらすべての財産を後継者へ承継させる内容の遺言では、将来的に遺留分を巡る紛争を誘発する可能性が高いため、遺言の作成にあたっては、弁護士などの専門家に相談されることを強くお勧めします。

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