このようなお悩みありませんか?-遺言の効力が争われる代表的なケース
① 遺言書が民法所定の方式に違反している場合
相続が始まった後で、被相続人が生前に作成した遺言書について、
「遺言書を開封したところ、押印がなかった」
「遺言書がパソコンで作成・印刷されたものだった」
など、発覚することがあります。
法律上、遺言書の種類は公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つがありますが、それぞれについて民法が定める方式に従って作成される必要があり、所定の方式に違反している遺言書には効力が認められません。
例えば、自筆証書遺言を作成しても、日付の記載がないものや印鑑が押されていなければ、法的に有効とはいえません。
② 認知症等で遺言者の遺言能力に疑問がある場合
①のような形式的な判断基準だけでは遺言書の有効性につき結論が出ないケースでは、争いが深刻化することがあります。
その代表的なものが、
「父の遺言書が見つかったが、認知症だった父が作成できたとは思えない」
「故人と同居していた家族が状況を利用して自分に有利な内容の遺言書を書かせたのではないか」
…といった、遺言能力の有無が争われるケースです。
遺言能力とは、遺言の内容と結果を理解することができる能力をいい、遺言能力の無い方が作成した遺言書は無効となります。
もっとも、実際には「遺言者が認知症を患っていた」という事実のみで直ちに遺言能力が否定されるわけではなく、遺言能力の有無は、遺言書作成当時の認知症の程度、遺言内容の難易、遺言の動機・理由、遺言者と相続人・受遺者(≒遺言によって財産を取得するとされている相続人以外の者)との人的関係・交流状況、遺言に至る経緯など、様々な事情を考慮して判断されることになります。
そのため、遺言能力を巡って遺言書の効力を争うためには、様々な証拠を集める必要があるとともに、高度な専門知識と経験が必要になります。
③ 遺言書の偽造が疑われる場合
また、相続のご相談をお受けしている中では、
「他の相続人に手書きの遺言書を見せられたが、故人本人の筆跡か疑わしい」
「遺言の内容が、故人が生前話していた財産の分割方法とかけ離れている」
…といったお話を耳にすることも多いです。
遺言書の筆跡が故人のものでない場合は、偽造があったとして効力が認められません。
もっとも、訴訟では必ずしも筆跡鑑定のみで偽造の有無について結論が出されるわけではなく、遺言の内容、遺言の動機・理由、遺言者と相続人・受遺者(≒遺言によって財産を取得するとされている相続人以外の者)との人的関係・交流状況、遺言に至る経緯など、様々な事情を考慮して判断されることになるため、紛争が複雑化しやすい類型といえます。
以下では多数の相続問題を取り扱ってきた弁護士が、遺言の内容に納得が出来ないときの対応方法をご紹介します。
遺言の内容に納得が出来ないときの対応方法
1 STEP:1 遺言無効の主張が認められそうかの見通しの調査
上述のとおり、遺言書が民法所定の方式に違反していることを理由とする場合を除き、遺言の有効・無効の判断は、遺言書作成当時の遺言者の判断能力の程度、遺言内容の難易、遺言の動機・理由、遺言者と相続人・受遺者(≒遺言によって財産を取得するとされている相続人以外の者)との人的関係・交流状況、遺言に至る経緯など、様々な事情を考慮して判断されることになります。
そのため、遺言無効の主張が認められるかの見通しを立てるためには、上記の事情を裏付ける証拠となる資料を可能な限り収集することが重要です。
例えば、「遺言書作成時には被相続人の認知状態に問題があり、遺言書を作成できる状態になかった」と主張して遺言能力を争う場合には、遺言書作成当時、あるいはなるべく近接した時期における被相続人の医療記録や介護記録を取得することが必要になります。
また、「遺言書の筆跡と被相続人の筆跡とが異なり、被相続人本人が作成したとはいえない」と主張して遺言書の偽造について争う場合には、遺言書以外で被相続人が作成した別の書面をなるべく多く準備する必要があります。
一般的には年賀状や手紙、日記、手帳といったものが見つけやすいと思いますが、出来たら遺言作成に近い時期のもので、コピーではなく原本を揃えることが望ましいです。
こうして収集した資料を分析し、遺言が無効と判断される可能性の見通しを判断した上で、その結果に応じて、その後の対応が変わることになります。
2 STEP:2 遺言無効の主張が認められそうかの見通しに応じた対応
(1) 遺言無効の主張が認められそうであるとの見通しを持った場合
まずは、交渉や調停の場で遺言の無効を主張していくことになりますが、遺言書が民法所定の方式に違反していることを理由とする場合を除き、交渉や調停で相手方が遺言書が無効であると認めることは稀であり、通常は、遺言無効確認訴訟を提起し、訴訟での解決を図ることになります。
ア 訴訟で遺言が無効と判断された場合
遺言が無効と判断された場合、法律的には遺言が元々なかったのと同じ状態となりますので、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
もっとも、遺言の効力を巡ってすでに紛争になった後で、当事者同士で協議することが難しい状態になっているのが通常であるため、遺産分割の調停や審判によって遺産分割の内容を決定していくことになるでしょう。
イ 訴訟で遺言が有効と判断された場合
遺言が有効と判断された場合、遺言内容が遺留分を侵害していれば、遺言書で財産を取得させるとされている者に対して遺留分侵害額請求を行うことができ、法律で定められた範囲の遺留分を受け取ることができます。
遺留分とは、相続に際して、法律が兄弟姉妹以外の相続人に対して保障している最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の相続人は、少なくとも遺留分に相当する財産を取得することができます。
ただ、遺留分侵害額請求には時効があり(遺留分侵害額請求の時効について詳しくはこちら>>)、一定の期間内に遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を行わないと遺留分侵害額を請求する権利が消滅してしまうので、注意が必要です。
遺言の効力を巡る訴訟は長期化することが多く、無効判決が勝ち取れればいいですが、仮に遺言無効訴訟で敗れた場合、その時点で遺留分侵害額請求権を行使しようとしても、すでに時効で消滅しているという事態にもなりかねません。
ですので、遺言無効を主張する場合でも、万が一の敗訴に備え、予備的に遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を内容証明郵便で行っておくようにしましょう。
(2) 遺言無効の主張が認められそうにないとの見通しを持った場合
遺言内容が遺留分を侵害していないかを検討することになります。
遺留分とは、相続に際して、法律が兄弟姉妹以外の相続人に対して保障している最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の相続人は、少なくとも遺留分に相当する財産を取得することができます。
そのため、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、遺言書で財産を取得させるとされている者に対して遺留分侵害額請求を行い、法律で定められた範囲の遺留分を受け取ることになります。
遺言無効の主張が認められそうかの見通しの調査を弁護士にご依頼いただくメリット
遺言の内容に納得できない場合、争う方法としては遺言無効を主張していくことになりますが、遺言の効力を巡る紛争は深刻化・長期化しやすく、多大な時間と労力を費やす必要があるため、争う前に、遺言無効の主張が認められそうかの見通しを立てることが極めて重要になります。
ただ、遺言無効の主張が認められそうかの見通しを立てるためには、遺言書作成当時の遺言者の判断能力の程度、遺言内容の難易、遺言の動機・理由、遺言者と相続人・受遺者(≒遺言によって財産を取得するとされている相続人以外の者)との人的関係・交流状況、遺言に至る経緯などの様々な考慮要素について、可能な限りの証拠を収集し、それらを総合的に分析する必要があるため、高度な専門知識と裁判経験が必要になるというのが実際のところです。
そのため、遺言の有効性に疑問を持たれるケースにおいては、弁護士にご依頼いただくことをお勧めします。
当事務所では、遺言無効訴訟の経験豊富な弁護士が専門的な知識や裁判例に基づき、収集すべき資料の選定、必要書類が多く面倒な医療記録や介護記録などの取得手続の代行はもちろん、収集した資料を総合的に分析し、遺言無効の主張が認められそうかの見通しをお伝えさせていただきます。
遺言書の内容に納得できない点がある方は、是非ご相談ください。
弊所では、遺言の有効性事前調査サービスも行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。詳しくはこちら>>
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代表弁護士の新井教正(あらいのりまさ)と申します。
リーガルサービスの提供を通じてお客様を笑顔にしたいとの思いから事務所名を「エミナス法律事務所」(笑みを為す)としました。
お客様を笑顔にするためには、出来るかぎりご希望に沿ったベストな解決を図る必要があります。
ご希望に沿ったベストな解決を図るためには、お客様のお話をじっくりと丁寧にお聞きすることが何より大切です。
そのため、当事務所では、十分なお時間を取り、まずは、お客様が抱いておられるご不安や紛争の解決方法に関するご希望を正確に理解するよう努めています。
その上で、ご不安を解消あるいは低減できるよう、ご納得いただけるまで何度でもお答えさせていただくとともに、どこまでもお客様に寄り添い、笑顔になれる解決を全力でサポートいたします。