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生前贈与のメリット・注意点を徹底解説!

生前贈与とは、相続が発生する前に自分の財産を自分の意思で譲るというものです。譲る相手は法定相続人である必要はなく、合意があれば誰にでも生前贈与ができます。

生前贈与を正しく理解して活用することは、遺留分対策や相続税の節税にもつながります。日本には、贈与税や非課税枠、特例制度など多くのルールがあります。この制度の中からどれを利用するかで将来の税金や相続が大きく変わってきます。

この記事では、生前贈与の基本から、メリット、注意点・非課税にするための条件や注意点、そして、専門家への相談方法まで、初心者でもわかりやすく解説します。生前贈与を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

生前贈与とは?

生前贈与とはどのような制度なのでしょうか。まず、生前贈与の基本をここで解説します。

生前贈与の基本

贈与とは簡単に言えば「財産などをあげること」です。そして、生前贈与とは、相続が発生する前に自分の財産を特定の人に譲ることを言います。

一般的には、親や祖父母などが、子どもや孫といった血の繋がった家族に自分の意思で財産を渡すケースが多く見られます。贈与の対象となる財産には、現金や預金だけでなく、不動産・株式・自動車などの資産も含まれます。

もちろん、家族ではない他人や特定の団体に自分の財産を贈与することもできます。

生前贈与は、相続が発生したときに課税される相続税の対策として利用されることが多く、制度を正しく理解し活用することで、財産を円滑な継承に繋がります。

ただし、生前贈与には贈与税がかかる場合もあり、金額や時期、受け取る人によって制度の適用や税金の負担が大きく変わるため、注意点をよく理解したうえで行う必要があります。

生前贈与のメリット

生前贈与は複雑な仕組みのように思えますが、しっかりと理解して計画的に利用することでメリットがあります。

相続税の節税になる

相続税には「基礎控除」があります。

相続税の基礎控除 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

これはすべての相続に適用される控除となります。

相続財産の総額がこの控除額以下の場合は、相続税はかかりません。相続税はこの控除額を超えた場合に課税される税金です。

生前贈与の制度を上手く活用することで、課税対象となる財産の総額が減るため相続税の節税につながるのです。

遺留分対策になる

遺留分とは、一定の法定相続人(主に配偶者、子、直系尊属)に法律上保証されている最低限の相続分のことです。

これを侵害するような遺言や贈与があった場合、相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。

原則として、生前贈与も「特別受益」として遺留分算定の対象に含まれますが、民法改正によって、相続開始前10年以上前の贈与は原則として対象外となりました。

その結果、早期(死亡の10年以上前)に生前贈与を行うことで、遺留分侵害額請求の対象となる財産を少なくすることができます。

相手方がお金を必要としているタイミングで財産を渡せる

生前贈与の大きな魅力の一つは、「お金を必要としているときに渡せる」という点です。

相続の場合、財産は被相続人が亡くなったときにまとめて分配されますが、生前贈与であれば、人生の節目や重要なライフイベントに合わせて贈与が可能です。

主な活用シーンは以下のとおりです。

1.教育資金としての贈与

子や孫の進学・留学・塾や習い事など、多くの家庭では教育費が大きな負担となります。

早期に贈与することで、進学資金を確保したり、私立学校や海外留学といった選択肢を実現することが可能になります。

2.住宅取得・リフォーム支援

住宅取得は人生で最も大きな買い物の一つです。

親や祖父母が早めに資金援助を行うことで、住宅ローンの借入額を抑えたり、好立地物件を選択できる可能性が広がります。

3.起業・自立支援

子や孫が自ら事業を始めたい場合など、初期投資や運転資金としての贈与も有効です。

こうした支援はタイミングが命ですので、必要なときに援助できる生前贈与は大変有効です。

4.介護や育児など家族の事情に応じた支援

たとえば、子どもの介護負担が大きい場合や、シングルマザー・ファザー家庭を援助したい場合にも、生前贈与を通じて必要な人に必要な支援を行うことができます。

また、遺言が自分が死亡した後に初めて効力が生じるため、指定した人が財産を受け取るのも自分が死亡した後になりますが、生前贈与は、生前に財産を譲渡することになるため、受け取った側の感謝の気持ちや家族の絆を深める効果もあります。

これは非課税!生前贈与の種類

生前贈与で非課税になる制度がいくつかあります。それぞれの制度ごとに条件が異なるためチェックしておきましょう。

基礎控除

生前贈与には「年間110万円までの基礎控除」があります。これは、1月1日〜12月31日の間に贈与された財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税の申告・納税は不要となるという制度です。

複数年にわたり活用することで、贈与税をかけずに資金を移転することができます。この制度を利用することで、節税ができるのです。

相続時精算課税

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母が、子や孫に贈与する際に選択できる制度です。贈与時に申告は必要であるものの、2,500万円までは贈与税がかかりませんが、将来の相続時に、この金額も相続財産として加算され、相続税が課される可能性があります。

一度この制度を選ぶと、暦年贈与(年間110万円の非課税枠)には戻れません。

また、相続時に全体の財産と合わせて精算されるため、相続税の節税にはならない可能性もあります。

ですので、相続時精算課税制度を利用した方が得なのかについては、税理士へ相談することをおすすめします。

配偶者控除

夫婦間で、実際に住んでいる自宅を贈与する場合に利用できる制度があります。

婚姻期間20年以上の夫婦が、居住用のための不動産やその購入資金の贈与をした場合は、最大2,000万円まで非課税となる特例です。

婚姻期間や住居用の不動産という指定はありますが、控除の枠が大きくメリットがある制度です。

住宅取得等資金

住宅を新築・購入・リフォームするための資金を両親や祖父母などから贈与された場合は、贈与税が非課税になるという特例です。

この非課税制度の対象となる贈与に関しては、建てる建物の細かい条件があるため国土交通省のページをチェックしたり、専門家に相談することをおすすめします。

国土交通省 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置

住宅:住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置 – 国土交通省

その他

他にも、子育て支援の非課税の枠が用意されています。

それが、両親や祖父母などの直系尊属が、子や孫に結婚資金や子育て資金を一括して贈与する場合に利用できる、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」という制度(本記事掲載時点である2025年4月時点での適用期間:2027年3月31日まで)です。

この制度では、贈与を受ける人が18歳以上50歳未満であれば、最大で1,000万円までの贈与税が非課税となります(ただし、結婚関連費用として使えるのは最大300万円まで)。

非課税の対象となるのは、結婚費用(結納・挙式・住居費など)や子育て費用(出産費用、医療費、保育料、学費など)で、対象経費に対して実際に支払ったことが証明できる必要があります。

さらに、非課税の適用を受けるためには、金融機関を通じて専用口座に贈与金を預け入れ、贈与税の申告を行うことが必要です。また、使わなかった残額については、贈与者の死亡や受贈者の50歳到達時に贈与税や相続税の課税対象になることがあります。

国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

また、特定障害者の将来の生活を支援する目的で、直系尊属などが「特定障害者扶養信託契約」を結んだ場合、信託された財産について一定額まで贈与税が非課税となる制度があります。

この制度では、受益者が特別障害者である場合は最大6,000万円まで、それ以外の特定障害者であれば最大3,000万円までの贈与が非課税となります。

なお、この非課税措置を受けるには、特定障害者扶養信託契約を適正に締結し、信託財産が障害者本人の生活費・療養費などに充てられる必要があります。参考 国税庁 障害者と税

障害者と税|国税庁

生前贈与の注意点

生前贈与をする際には、ただ「毎年お金を渡せば良い」というわけではありません。贈与の際の注意点について知っておきましょう。

税金は「もらった人が支払う」

税金は「利益を得た人」が税務署に申告して支払うべきものです。これは生前贈与であっても同様で、もらった人が払うものなのです。

生前贈与には「基礎控除」などの非課税枠があり、1年間に110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。しかし、この枠を超える額を受け取った場合には、申告し、納税する必要があります。特例を利用する場合は内容をしっかりチェックしておく必要があります。

特別受益にも注意!

亡くなる10年前までの間に相続人へ贈与された財産は「特別受益」として扱われる可能性があります。特別受益とは、亡くなった被相続人から特定の相続人に対して生前贈与として与えられた財産です。以下のようなものが該当します。

・結婚資金や新居購入の資金援助

・養子縁組に伴う贈与

・生活のための資金

特別受益に該当する贈与は、相続分や遺留分から差し引かれることになります。その結果、贈与を受けた相続人は、受け取ることができる財産が減ってしまう可能性があります。

特定の人に財産を譲りたいとき、その相手が法定相続人である場合は、遺留分や特別受益についても考慮する必要があります。

定期贈与と見なされないよう注意

毎年、同じ金額を定期的に贈与している場合には、定期贈与(連年贈与)とみなされる可能性があります。「定期贈与」とされると、贈与額が110万円の基礎控除の範囲であったとしても贈与税がかかるケースがあります。

定期贈与と判断されないようにするためには、毎年内容を変えた贈与契約書を作成して「都度贈与」であることを証明できる書面を残すことなどで対策できます。

解らないことがある場合は、必要に応じて専門家のアドバイスを受け、正しい形で贈与を行いましょう。

国税庁 贈与税がかかる場合

No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

譲る財産によっては手数料や登記移転が必要

贈与する財産が現金や預金であれば比較的手続きは簡単ですが、不動産や車などの資産を贈与する場合は登記移転や名義変更が必要です。また、取得したあとに他の費用(自動車であれば駐車場代など)もあります。

たとえば、不動産を生前贈与する際には「所有権移転登記」が必要になり、登録免許税がかかります。専門家に依頼した場合は依頼費用も必要です。

また、不動産取得税や、その他の費用が発生するケースがあるため、贈与前にしっかりと費用のシミュレーションを行っておきましょう。

名義預金は生前贈与にならない

名義預金とは、贈与者が口座を管理している預金のことをいいます。たとえば、親が子の名義で口座を作ってそこに預金しているケースなどです。その通帳や印鑑を親が管理している場合、それは「名義預金」とされます。親ではなく配偶者や祖父母というケースもあります。

名義預金は、相続発生時には相続財産と見なされるリスクがあります。相続財産だと見なされた場合は、相続税の課税対象となってしまいます。

名義預金であるかのポイントは、実際に誰が口座を管理していたかです。本人が管理している口座に都度贈与として、毎年非課税の枠内での振り込みがある場合であれば、贈与として認められる可能性が高くなるでしょう。

生前贈与で解らないことは専門家に相談

生前贈与や相続のルールはとても複雑です。解らないことがある場合は専門家に相談しましょう。

税理士に相談する

贈与税や相続税に関するルールはとても複雑です。年間110万円の基礎控除について、相続時精算課税制度、配偶者控除や住宅取得等資金の非課税措置などなど、生前贈与に関係する制度は非常に多岐にわたっています。そして制度は新しく追加されたり、見直されたりすることもあります。

ですので、解らないことがある場合は放置せずに、税理士に相談しましょう。

税理士に相談することで、適切な税金のシミュレーションが可能となり、無理のない合法的なシミュレーションができます。特に、高額な資産があり生前贈与を検討しているという場合は、事前にしっかりと相談しましょう。

専門家のアドバイスで計画的に生前贈与しよう

生前贈与を行う際には、税理士や弁護士、そして、場合によっては司法書士に相談しましょう。こうした法律の知識がある専門家に相談することで、後々の家族間のトラブルの防止にも繋がります。

専門家のアドバイスを受けて、生前贈与をどのような流れで誰に対して行うのかを把握して、適切な計画を立てることが安心材料となります。

まとめ

生前贈与のルールは複雑ではありますが、制度を理解して活用することでさまざまなメリットがあります。生前贈与をすることで、自分の意思で特定の人に財産を渡せるだけでなく、相続税の節約にもなります。

年間110万円の基礎控除の活用、そして、さまざま特例制度を活用して、計画的な節税が可能です。ただし、生前贈与に関しては注意点も多く、「名義預金」や「定期贈与」とみなされてしまうと、予定外の税金が発生したり、場合によっては相続トラブルに発展する恐れがあります。ですので、生前贈与は、早めの計画・正しい手続き・専門家のサポートが欠かせません。

大切な資産を安心して引き継ぐためにも、自分の財産の状況を把握して家族と相談しながら進めていきましょう。解らないことがある場合は放置せずに、税理士や弁護士などの専門家に相談してください。

この記事の執筆者

弁護士新井教正(アライノリマサ)

代表弁護士の新井教正(あらいのりまさ)と申します。
リーガルサービスの提供を通じてお客様を笑顔にしたいとの思いから事務所名を「エミナス法律事務所」(笑みを為す)としました。
お客様を笑顔にするためには、出来るかぎりご希望に沿ったベストな解決を図る必要があります。
ご希望に沿ったベストな解決を図るためには、お客様のお話をじっくりと丁寧にお聞きすることが何より大切です。
そのため、当事務所では、十分なお時間を取り、まずは、お客様が抱いておられるご不安や紛争の解決方法に関するご希望を正確に理解するよう努めています。
その上で、ご不安を解消あるいは低減できるよう、ご納得いただけるまで何度でもお答えさせていただくとともに、どこまでもお客様に寄り添い、笑顔になれる解決を全力でサポートいたします。

執筆者プロフィール

新井教正(アライノリマサ)
累計1000件以上の相続相談に対応し、NHKの番組でも『遺産相続問題に詳しい弁護士』としてご紹介いただきました。相続に関する書籍も多数出版しています。難易度の高い相続案件も対応可能です。初回相談では、相談者の方のお話をじっくりお伺いし、相談者の方の立場に立って考え抜き、できるだけ簡単な言葉で分かりやすく説明することを心がけています。

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