「死んだらあげるから」という口約束は有効?
相続・遺言Q&A遺言は一定の方式に従って書面で作成する必要があるため、遺言としての効力は認められません。
しかしながら、死因贈与(=贈与者の死亡によって効力を生じる贈与)として効力が認められる可能性があります。死因贈与は契約であり、契約は口頭(=口約束)でも成立するためです。
問題は、口約束があったことを立証できるかです。
口約束をした時のやり取りが録音・録画されている場合、立証は容易であり、また、録音や録画がない場合でも、客観的に中立な第三者(例:医者など)が立ち会っており、当該第三者が証言してくれる場合は、立証の可能性は十分にあるでしょう。
ただし、書面によらない死因贈与については、贈与者の死亡前に贈与者が撤回することは原則として可能であり、また、贈与者の死亡後であっても、相続人において撤回することができると解されている(通説/東京高判H3.6.27など)点には注意が必要です。
相続人の一部だけが撤回を主張している場合でも撤回が可能かについては見解が分かれていますが、東京高判S60.6.26は、「相続人のうちの一人が、その相続分に相当する部分に限定して、贈与の一部を取り消すことも可能であると解され(取消権の可分性)、その場合には、当該相続人が単独でその相続分に係る部分を取り消すことができるというべきである。」と判示しています。
執筆者プロフィール
- 累計1000件以上の相続相談に対応し、NHKの番組でも『遺産相続問題に詳しい弁護士』としてご紹介いただきました。相続に関する書籍も多数出版しています。難易度の高い相続案件も対応可能です。初回相談では、相談者の方のお話をじっくりお伺いし、相談者の方の立場に立って考え抜き、できるだけ簡単な言葉で分かりやすく説明することを心がけています。
最新の投稿
- 2025年6月13日遺書と遺言書の違いを弁護士が徹底解説!
- 2025年5月2日【相続で介護の寄与分が認められるために必要な6つの要件とは?】判例と計算方法を弁護士が解説
- 2025年5月2日生前贈与のメリット・注意点を徹底解説!
- 2025年4月9日不動産相続の名義変更に期限はある?不動産を相続したときに知っておくべき基礎知識とは?
その他のコラム
遺産分割調停を欠席すると何か不利なことはあるのでしょうか?
相続・遺言Q&A1 一部の調停期日を欠席する場合 お仕事や体調不良などの合理的な理由があれば、特に不利になることはありません。 ただし、必ず事前に裁判所へ連絡し、指示に従うようにしてください 2 全部の調停期日を欠席する場合 (1) 知らないうちに調停が成立してしまうという不利は生じません 遺産分割調停が成立するためには、相続人全員の参加が必要であり、欠席している相続人がいるにもかかわらず
預貯金を使い込まれてしまった場合の対応方法を教えて下さい。
相続・遺言Q&A最も重要なのは、預貯金が使い込まれていることを示す証拠の収集と分析です。 相続人の一部の者による預貯金の使い込み(使途不明金)があった場合、他の相続人は、預貯金を使い込んだ相続人に対して、その返還あるいは損害賠償を請求することができます。 交渉で相手方に預貯金の使い込みを認めさせ、あるいは、裁判において生前の預貯金の使い込みがあったと認定してもらうためには、証
「死んだらあげるから」という口約束は有効?
相続・遺言Q&A遺言は一定の方式に従って書面で作成する必要があるため、遺言としての効力は認められません。 しかしながら、死因贈与(=贈与者の死亡によって効力を生じる贈与)として効力が認められる可能性があります。死因贈与は契約であり、契約は口頭(=口約束)でも成立するためです。 問題は、口約束があったことを立証できるかです。 口約束をした時のやり取りが録音・録画されている場合、立証は容易であり、また、
香典は遺産にあたるか?
相続・遺言Q&A香典は、死者への弔意、遺族へのなぐさめ、葬儀費用など遺族の経済的負担の軽減などのために、喪主や遺族に対してなされる贈与であるため、遺産にはあたりません。 香典は、慣習上香典返しに充てられる部分を控除した残りの部分が葬儀費用に充てられますが、葬儀費用を支払ってもなお残余金が生じた場合は、喪主が取得すると解する説と、相続人が法定相続分に従い取得すると解する説に分かれています。
葬式費用は誰が負担しなければならないのか?
相続・遺言Q&A葬儀費用の負担者については、法律の定めも、最高裁判所の裁判例もありませんが、実務上は、きちんと明細等を開示して説明すれば、他の相続人が葬儀費用を遺産から支出することについて異議を唱えることはあまりないと思われます。 ただ、他の相続人が異議を唱えた場合、葬儀費用を誰が負担すべきかについては、 ①喪主が負担すべきとする説(=喪主負担説) ②相続人が負担すべきとする説(