被相続人から仕送りや生活費の援助を受けていた相続人に特別受益が認められますか?
相続・遺言Q&A相続人が被相続人から仕送りや生活費の援助を受けていたとしても、常に特別受益に該当するわけではありません。
直系血族(例:親子)及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負担しています(民877)。そのため、被相続人から相続人に対する仕送りや生活費の援助が「扶養義務」の範囲内と評価される場合、「生計の資本としての贈与」とは認められず、特別受益には該当しません。
被相続人から相続人に対する仕送りや生活費の援助が「扶養義務」の範囲を超える援助と評価できる場合に限り、超える部分が特別受益に該当することになります。
被相続人から相続人に対する仕送りや生活費の援助が扶養義務の範囲内か否かは、以下の要素を総合的に考慮して判断されますが、過去の裁判例(東京地判H21.1.30、札幌家審H26.12.15、東京地判R3.2.22)を見ると、月10万円が一つの目安になるかと思われます。
・1ヶ月の援助額(多い方が特別受益と認められやすい)
・援助期間(長い方が特別受益と認められやすい)
・被相続人の資産・収入の状況(少ない方が特別受益と認められやすい)
・遺産の総額(少ない方が特別受益と認められやすい)
・被相続人と相続人の親族関係(親子より兄弟姉妹の方が特別受益と認められやすい)
・相続人の扶養の必要性の程度(低い方が特別受益と認められやすい)
ただし、被相続人から相続人に対する仕送りや生活費の援助が特別受益に該当する場合でも、明示または黙示の「持戻し免除の意思表示」があったと認められる場合、遺産分割において、これらを持ち戻すことはできなくなります。
執筆者プロフィール
- 累計1000件以上の相続相談に対応し、NHKの番組でも『遺産相続問題に詳しい弁護士』としてご紹介いただきました。相続に関する書籍も多数出版しています。難易度の高い相続案件も対応可能です。初回相談では、相談者の方のお話をじっくりお伺いし、相談者の方の立場に立って考え抜き、できるだけ簡単な言葉で分かりやすく説明することを心がけています。
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