兄へすべての遺産を相続させる旨の遺言が作成されていたため、弟である依頼者から、遺留分(=6分の1)請求のための訴訟を依頼されました。
争点は多岐にわたりましたが、主たる争点の一つは不動産(土地)の評価額でした。
解決事例
兄へすべての遺産を相続させる旨の遺言が作成されていたため、弟である依頼者から、遺留分(=6分の1)請求のための訴訟を依頼されました。
争点は多岐にわたりましたが、主たる争点の一つは不動産(土地)の評価額でした。
当該土地については、被相続人と兄が設立した会社との間で賃貸借契約書が締結されており、会社は当該土地上に建物を建て、当該建物を老人ホームの運営会社へ貸していました。
会社から被相続人への賃料は固定資産税を少し上回る程度の金額(月数万円)であるのに対し、会社が老人ホームの運営会社から受け取っている賃料はその数十倍(月百数十万円)に及んでいること、さらには、兄が設立した会社が当該土地上に建物を建築した目的が相続税の軽減目的であったため、これらを根拠として、契約書上は賃貸借契約となっており、また、賃料名目でお金が支払われているとしても、実質的には使用貸借契約と評価すべきであるとの主張・立証活動を行いました。
当方の主張が認められ、相続における不動産の評価にあたっては、被相続人と兄が設立した会社との間の契約は賃貸借ではなく使用貸借と同様に評価するのが相当であるとの判断が示されました。
その結果、賃貸借と評価した場合と比較して評価額が4000万円アップし、依頼者の取得分を700万円増額させることができました。
相続の場面では、遺産である土地を、「賃貸借契約書」というタイトルの契約書を締結し、賃料も支払った上で、相続人あるいは相続人が経営する会社が使用している事例はよく見られます。
支払われている賃料が適正な金額であれば問題はないのですが、親族間の契約であるがゆえに、賃料が非常に安く設定されていることも多々あり、そのような場合にまで、賃借権(=賃貸借契約に基づく権利)の負担付きの土地として評価されてしまうと、土地の評価額(=時価)が著しく低下してしまい、土地を使用する権利を有していない相続人が損をする結果となってしまいます。
土地を使用する権利には、使用借権(使用貸借契約に基づく権利)という権利もあります。使用借権は賃料の支払いがなく、賃借権よりも弱い権利であるため、使用借権の負担付きの土地と評価されれば、土地の評価額は低下しますが、その程度は、賃借権の負担付きの土地と評価される場合と比べて格段に小さくなります。
そのため、本件では、「賃貸借契約書」というタイトルの契約書が締結され、賃料も支払われているものの、賃料の低さやその他の事情を総合的に考慮すれば、賃借権ではなく使用借権と評価するのが妥当であるとの主張を行い、当該主張を裁判所も認めてくれました。
賃料がどの程度であれば使用借権と同様に評価してもらえるのかは一概には言えず、賃料以外の諸事情も考慮する必要があるため、同様の主張を検討される際には弁護士へ相談することをお勧めします。