依頼者と弟の間で遺産分割協議を行った結果、遺産分割の内容について合意に達したため、弟が弁護士へ遺産分割協議書案の作成を依頼したのですが、念のため、依頼者の方でも専門家のチェックを受けたいとのことで依頼がありました。
株式に関する遺産分割協議書の記載の仕方で損失を被りかけた事例
- 性別:男性
- 依頼者情報:●争点別:遺産分割 ●遺産額:3000万円以上 ●遺産の種類:上場株式 ●相続人の関係:実の兄弟
依頼者が認識している遺産分割の内容と弟が弁護士に依頼して作成した遺産分割協議書案の内容が一致しているかどうが、依頼者が予期しない損害を被る可能性がないかどうが、をチェックしました。
遺産分割の内容は、依頼者が株式(評価額:3000万円)すべてを取得する代わりに、依頼者から弟に対して代償金として1500万円(弟の法定相続分相当額)を支払うという内容で、遺産分割協議書案にも、当該内容が記載されていました。
当職から依頼者に対し、代償金はどのようにして工面するのか確認したところ、取得した株式の半数を売却して工面するとのことであったため、そうであれば、どうして株式を2分の1ずつ取得する内容としなかったかと確認したところ、弟から、株式取引の経験がないため依頼者の方で株式の処理はすべて行ってほしいとのことで、上記の遺産分割内容になったとのことでした。
しかしながら、提案された遺産分割協議書案の内容のまま署名・押印してしまうと、依頼者が損失を被ってしまいます。
というのも、株式には含み益が生じており、売却すれば譲渡所得税が課税されるところ、売却時には株式の名義が依頼者へ移転しているため、依頼者が当該譲渡所得税を支払う必要があるためです。仮に譲渡所得税が100万円だったとした場合、依頼者が弟への代償金を捻出するために1500万円分の株式を売却しても、譲渡所得税を考慮すると、手取りは1400万円にしかならず、依頼者は、不足の100万円を自分の財産なり相続した株式を売却して賄わなければなりません。その結果、弟はまるまる1500万円を取得できますが、依頼者は1400万円しか取得できない結果となってしまいます。
そのため、遺産分割協議書案の条項を依頼者が損失を被ることがないような表現へ修正した上で、遺産分割協議を成立させました。
代償分割(相続人の一人が遺産を現物ですべて取得する代わりに、他の相続人に対してその相続分に見合う金銭を支払うことです。)を行う際、遺産を現物で取得する相続人が、取得した遺産を当面は保有しつづける考えで、代償金は自己資金から捻出する予定の場合、譲渡所得税を考慮する必要はありません。
しかしながら、遺産を現物で取得する相続人が、当該遺産を処分して代償金を捻出する予定の場合、譲渡所得税も考慮に入れた遺産分割協議書を作成しないと、遺産を現物で取得した相続人は予想していたよりも手取りが減る結果となり、損をしてしまいますので注意が必要です。
遺産分割協議書の内容については、表現次第で、譲渡所得税で損をする、登記ができないなどの予期せぬ不都合が生じる可能性があるため、必ず専門家のチェックを受けるべきでしょう。
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- 依頼者情報:●争点別:預金の使い込み ●遺産額:3000万円以上 ●遺産の種類:預貯金 ●相続人の関係:被相続人の子と被相続人の姉
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