相続の処理を長期間にわたって放置しているうちに相続人が29名にも及ぶ事態となり、相続人相互の関係性が希薄、あるいは、面識すらないという状態のため、遺産分割協議自体を進めることが困難という事案でした。
相続人が29名にも及んだ遺産分割の事例
- 性別:男性
- 依頼者情報:●争点別:遺産分割 ●遺産額:3000万円以上 ●遺産の種類:預貯金 ●相続人の関係:被相続人の兄弟姉妹と被相続人の配偶者の兄弟姉妹
相続人が29名にも及ぶため、まずは文書にて法定相続分に従った遺 産分割に同意いただけるかの照会文書をすべての相続人宛に送付し、意向確認を行いました。
内27人からは「同意する」旨の回答をいただけましたが、内2名からは「同意できない」旨の回答であったため、当職から個別に電話連絡を行い、29人中の27人が同意していること、同意いただけないと法的手段を取る予定であること、裁判(=審判)となっても法定相続分以上の遺産を取得できる可能性はなく、むしろ時間、手間暇、お金の負担が発生する可能性があること、などを説明しました。
当初は「同意できない」との回答であった2人の相続人からも同意を得ることができたため、すべての相続人に必要書類への署名・押印をいただくとともに、印鑑証明書を提出いただき、これらに基づいて当職の方ですべての預貯金を解約した上で、解約金から弁護士費用を含めた必要経費を差し引いた残額について、法定相続分に応じた配分を行い、遺産分割を完了させました。
事案のように、相続人が極めて多数に上る場合、何をするにも手間暇がかかってしまいます。他方で、このような事案の特徴としては、被相続人と相続人との間の人間関係が希薄であるがゆえに、特別受益や寄与分といったややこしい問題が出てくる可能性は低く、法定相続分に応じた遺産分割になる可能性が高いという点が挙げられます。
そのため、他の相続人の感情を不必要に刺激することのないよう丁寧な文言で、また、遺産の内容も資料を添えてきちんと情報開示した上で、弁護士費用を含む必要経費は控除した上で、残った遺産を法定相続分に応じて分割する旨の提案を行うのが最善の方策です。
それでも、最初の意向照会の段階では、必ずと言っていいほど、なぜか数人は同意されない方がいらっしゃいますが、そのような方には個別に電話連絡を行い、解決結果の部分に記載したような説明(言い方は悪いですが、あめとむちの使い分けが重要です。)を行えば、最終的には同意が得られる事案が大半です。
ただ、①手間暇が非常にかかること、②どのような理由かは全く理解できないのですが、必ずと言っていいほど同意しない相続人が数人出てくるため、最終的な説得作業が必要になること、③最終的な説得に応じない場合には、調停・審判の手続きを取る必要があり、これを見据えた準備も同時並行で進める必要があるため、事案のように相続人が多数に上る場合というのは、本来的には弁護士へ依頼した方がよい事案の一つと言えるでしょう。
その場合、最も気になるのは弁護士費用の負担についてですが、最後まで反対している相続人に負担させることはできないため、最悪、その分は持ち出しになってしまいます。ただ、かかる事案では、大半の相続人から弁護士費用の負担も含めて同意いただけるのが通常であり、また、相続人が多数に上るということは、一人当たりの負担額が小さいと言えるため、最悪、持ち出しになったとしても、それほど大きな金額にはならないことが多いと言えます。
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