父親が死亡したため預貯金を調査したところ、以前に聞いていた父親の財産状況からすればあまりにも残っている金額が少なすぎるので調査してほしい、とのことで相談に来られました。
母親はすでに死亡していたため、相続人は依頼者と弟の2人でしたが、弟とは音信不通のため、依頼者のみからの依頼となりました。
依頼者の話によれば、死亡前数ヶ月間、父親は叔母(父親の姉)の自宅近くの病院に入院していたとのことでした。
死亡前の4ヶ月間に9000万円の預貯金が出金されていた事例
- 性別:男性
- 依頼者情報:●争点別:預金の使い込み ●遺産額:3000万円以上 ●遺産の種類:預貯金 ●相続人の関係:被相続人の子と被相続人の姉
金融機関から取引履歴を取得したところ、死亡前の4ヶ月間に9000万円もの出金がなされていることが判明しました。
窓口で出金されているものについては出金時の書類を取得してその筆跡を確認したところ、少なくとも父親の筆跡ではないとのことでした。
ATMで出金されているものについては出金場所(=ATMの設置場所)の調査を行ったところ、すべて叔母(父親の姉)の自宅近辺のATMで出金がなされていました。
父親の病状を確認すべく、医療記録を入手して検討した結果、父親が出歩ける状態ではなかったことも確認できました。
これらの調査により、叔母(父親の姉)が出金した可能性が極めて高く、また、証拠も十分と判断できたため、叔母に対して交渉の申入れを行いましたが、返答がなかったため、調停の申立てを行いました。
調停に出席した叔母(父親の姉)からは、
①すべて依頼者の父親の指示に基づき出金し、出金したお金の内の3000万円は指示された使途(治療費、親族への贈与など)に支出したので返還する必要はない、
②依頼者には1500万円の特別受益(=生前贈与)があるため、返還すべき割合は法定相続分である2分の1よりも少ない、
との主張がなされました。
①の内、治療費は理解できるものの、使途の大部分を占める親族への贈与(2500万円)は、危篤状態から回復した当日に指示されたとの説明であり、到底信じられず、
また、②は理論的におかしな主張であったため、訴訟提起に踏み切りました。
訴訟では、親族への贈与の不自然さを中心に、主張・立証活動(贈与を受けたとされる親族の一部への証人尋問を含む。)を行いました。
その結果、贈与を受けたとされる親族は10名おり、一人当たり200万円から300万円と決して少なくない金額であるにもかかわらず、全員が贈与を受けた後、自宅で現金で保管しており、銀行口座へ入金した者がいなかったこと、また、贈与を受けた証拠として提出されていた親族各人の領収書が、実は当職からの交渉申入れ後に事後的に作成されたものであることが判明しました。
裁判所からの和解勧告により、叔母(父親の姉)から依頼者に対し4000万円を返還する内容で和解が成立しました。
生前の預金の使い込みの事案では、取引履歴の取得・分析、出金時の書類・出金場所の調査、医療記録・介護記録の取得・分析による出金当時における本人の心身の状態の調査などを通じて、本人以外の者が出金したことを立証できるかが非常に大きなポイントになります。
本人以外が出金したことが立証できそうであれば、次のポイントは、出金当時における本人の心身の状態や本人が管理していた際の出金態様・お金の使い方などを根拠として、出金者側から主張される使途の不自然さなどをどれだけ指摘できるかになります。
生前の預金の使い込みの事案は特に調査すべき事項が多く、また、取得した書類の分析を通じて見通しを立てた上でどのような主張・立証を行っていくのが最も適切かを判断する必要もあるため、弁護士への依頼を検討いただくのが望ましい事案の一つと言えます。
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- 依頼者情報:●争点別:遺産分割 ●遺産額:3000万円以上 ●遺産の種類:収益不動産、実家、預貯金、上場株式 ●相続人の関係:実の兄弟
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